設立趣意

 


私たちの五感のうち触覚は胎内でもっとも早く形成される.そして五感のうちでもっとも発展が遅れている.

 

音は目に見えない.そして音楽は異なる音の“つながり”で構成されている.かつては,生じると消えてしまう音は保存する方法がなく,音楽はすべてその場かぎりの即興演奏であった.

 

やがて,音の保存法として「楽譜」が考案されると音楽を保存し再生することが可能となり,音楽は爆発的に進歩していくことになる. 

触覚には楽譜に相当するものがない.

 

そのため,作曲法のような触覚の“つながり”のテクネ(技術・技巧・芸術)が発達してこなかった.触覚のテクネ,その唯一の例外がマッサージである.

 

マッサージは医聖と称されるヒポクラテス(B.C.400年頃)がその効果を指摘し治療への適用を奨励していた.だがヒポクラテスから二千年余を経てもマッサージはいまだ補完医学の一つに位置付けられているに過ぎない.

マッサージのテクネを記録する方法として編み出された“記号”は,2010年頃から「触譜」として体系化された.

触譜, Tactile Score とは生じると消えてしまう“触覚”を保存する方法である.触譜が提案されると,瞬くうちに触譜はさまざまなメディアへと入り込み,それまで言語化されてこなかった広義の触覚は触譜として記述され設計されるようになってきた.

そこで触譜を軸とした異なる触覚の時間・空間的な組み合わせ系列「あたらしい触覚学,Tactileology」を提唱し分野横断的な研究ならびに公明正大な普及と発展をミッションとして日本触覚学会の設立に至った.

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